弊社には常用の大工が3人いるので、今のところ仕事はできています。
でも3人とも70代前半で、「体がきつい。そろそろ辞めたい」と言います。
なんとか頑張ってもらっていますが、それもあと5年くらいかと思います。
その後どうするか、正直よく分かりません。なんとかなると思っているのですが…。
(工務店・年商2億円・46歳・新潟)
なんとかなると思いたい、お気持ちは分かります。
しかし残念ですが、なんともならなくなりつつあります。
周りを見回してみてください。
大工さんだけでなく、左官屋さん、クロス屋さん、水道屋さんなど、多くの職人業種が高齢化しています。そして間もなく引退を迎えます。
いよいよ職人不足が現実的になってきました。
職人不足については、第72回でも取り上げています。
この記事では、もう少し詳しく見ていきます。
平成30年度の新設住宅着工戸数はどうだったのか?
新設住宅着工戸数は、昨年度(平成30年度)は95.3万戸(前年度比0.7%増)で、前年並みでした。
内訳は
・一戸建て住宅が43.3万戸(3.0%増)
※ 一戸建てのうち、持家28.8万戸(2.0%増)、分譲戸建14.5万戸(5.1%増)
・マンションが12万戸(10.5%増)
・貸家は39万戸(4.9%減)
でした。
新設住宅着工戸数は、ここ数年堅調でした。
しかし、新築を建てる世代は確実に減っており、新築市場は縮小していきます。
国勢調査で大工の減少が明らかに
問題は、大工さんや職人さんの減少です。
大工人数の推移
このグラフは、5年ごとに行われる国勢調査のデータを基に弊社が作成した「大工人数の推移」です(折れ線は2000年を100としたときの推移)。
2000年(平成12年)には、全国に約65万人の大工さんがいました。
それが15年後、2015年(平成27年)には約35万人まで減少。
なんと45%減です。半減と言ってもいいくらいです。
一方、2000年の新設住宅着工戸数は約121万戸、2015年は約92万戸でした。
こちらの減少率は24%です。
このことから、新築需要の落ち込み以上に、大工さんが急激に減っているのが分かります。
大工の年齢内訳
さらに2015年の大工さんの年齢別内訳を作成してみました。
これを見ると、2015年10月時点で既に、約4割の大工さんが60歳以上だったのです。
それでもこの時は、団塊の世代(昭和22年~24年生まれ)の多くは現役でした。
しかし、それから4年経過した2019年の今、昭和24年生まれの方が70歳になります。
つまりこの円グラフの「60歳代」の約半分が引退年齢にさしかかってきていると考えられます。
あと5年もすると、新築でもリフォームでも職人不足が深刻化することは明らかです。
大工の減少について…野村総研のレポート
野村総合研究所(NRI)の2018/06/13付レポートには、2030年までの大工の人数について以下のようなコメントがあります(一部省略)。
・大工の人数は、2030年には21万人にまで減少すると見込まれる。
・需要(着工戸数)の減少を、供給(大工)の減少が上回る。
・これまで大工1人当たりの新設住宅着工戸数は年間約2戸前後だったが、大工の生産性を1.4倍まで引き上げないと、60万戸の需要でも供給できなくなる可能性がある。
工務店の近未来は?
これらの状況は、大工さんだけの問題ではありません。
家づくりに関わる職人さん全般に言えることです。
そこで、3~5年後の近未来を想像してみましょう。
→ 売上減少または売上が不安定に
↓
→ 外注費が上昇
↓
→ ますます粗利減少
↓
→ 自前の大工さんがいない工務店は競争で勝てない
↓
これに資材や設備の値上げが追い打ちをかけてきます。
なかなか厳しい状況が予想されます。
ではどうしたらよいのかを考えていきましょう。
第74回に続きます。
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