第76回記事の続きです。
現場見学会を開催するにあたり、迎える側として、お客さまの考えていることや気持ちを知っておきましょう。
現場見学会の目的・ねらい(お客さま側)
お客さま側から見た現場見学会の目的・ねらいは、主に以下の5点となります。
1. 自分が建てたい家、住みたい家のイメージを明確にする・具体化する
2. 資金、建物、全体の流れなど、家づくりの全体像を知る
3. 家に関するハード面(工法や性能・素材)、ソフト面(デザインや住み心地・使い勝手)の知識を得る
4. 他社と比較検討する
5. 共感できる依頼先や営業スタッフかどうかを見極める
このような目的があることは、工務店さんならよくお分かりだと思います。
ここで重要なポイントが一つあります。
ほとんどのお客さまは「家づくりに関しては未経験者であり、よく分からない」ということです。
「分からない」から勉強していただく
工務店さんは「家なら毎日住んで生活しているのだから、ある程度は見当がつくだろう」と思うかもしれません。
しかし、「住む」ことと、「建てる」ことは全く違います。
当たり前のように家について日々考え、建てて仕事をしている工務店さん。
一方、ある日「家が欲しい」と思い立って、家づくりについて考え始めるお客さま。
ここに、意識のズレが生じているのです。
家は「一番高い買い物」だと言われます。
お客さまが一生のうちで買うものの中で、「一番高く、一番よく分からないもの」だと考えてください。
ご自分に置き換えてみても、よく分からない高いものは、怖くて買えませんよね。
ですから、現場見学会で、まずはお客さまに「家づくりの勉強をしてもらう」のです。
意識のズレが起こった例
「家を建てたい」と思ったお客さまは、何から手をつければいいのか、何に注意が必要なのか、何をどのように進めていくのか、よく分からない状態です。
ネットで調べたり、住宅雑誌を集めたりするのですが、現在は情報があふれているので、何を頼りにしたらいいのか判断がつきません。
とりあえず実物を見てみようと、地域の総合展示場に行ってみます。
展示場で対応してくれた、ハウスメーカーの営業マン。
自社の工法や耐震性、坪単価、間取りの話などを、どんどん説明し始めます。
「そういうことじゃないんだけど…。なんか違う…」
お客さまは「行ってみたけど結局よく分からなかった」という感想でした。
なぜ、こうなってしまったのでしょうか。
先ほどの営業マンは、「家」の説明はしていますが、「家づくり」については説明をしていません。
つまり、お客さまの「知りたいこと、分からないこと」に答えていないのです。
お客さまは何が分からないのか
これは答えになっていないのですが、お客さまは「何が分からないのかが分からない」状態です。
例えるなら、工務店さんにおけるホームページ作りがそれに近いかもしれません。
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ホームページを作ってもらうといいらしい。
まずは何をすればいいの? 誰に頼めばいいの? 中身は自分で考えないといけないの?
ウェブサイトって何? ホームページと違うの?
あ、同じなの… それならそう言ってよ…
セッション? SEO? コンバージョン? 何の話をしている??
もー、日本語で言え!
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これは笑い話ですが、実際に工務店の社長さんと話していて、時々出る話題です。
自分が全く知らない分野に関しては、「いったい何をどうしたら?」となります。
お手上げですよね。
同様に、家づくりをするお客さま自身、「何を知りたいか」さえ分からない、という場合も少なくありません。
ですから、漠然とした不安と期待が入り交じっているのです。
言われないと気づかないことばかり
例えば、初めて見学会に来られたお客さまに、「家を建てるのに必要なものはご存じですか?」と尋ねてみます。
答えが出てこないときに、「その一つは土地です」と言うと、「あー、確かに!」という反応をされます。
家を建てるのには土地が必要。工務店さんにとっては当たり前ですね。
ところが人は、普段意識していない事柄については、言われないと気づかないことがあるものです。
お客さまに「分からないことは聞いてくださいね」と言ったところで、お客さまは「何が分からないのかが分からない」わけですから、質問のしようがありません。
そこで、お客さまの分からないことは何かを考えます。
そして先回りして説明するよう心がけます。
このような姿勢があると、「この工務店さんはいいね」につながりやすくなります。
第78回に続きます。
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