第84回記事の続きです。
[5]接客シナリオ・接客ツールの用意
では、接客のための準備について考えていきます。
現場見学会でお客さまに気持ちよく「家づくりの勉強」をしていただくために、工務店側はどのような接客をするのか。
ここはとても大切なところです。
工務店さんには、職人タイプの方も多くいらっしゃいます。
それでも、「工務店は建築業であると同時に接客業である」という意識を持っていただきたいと思っています。
いくら技術に自信があっても、お客さまがいなければ、家を建てることはできません。
そのために最低限のマナーや言葉づかいは知っておくこと、できれば普段から練習し身につけておくことが望まれます。
接客シナリオの用意
お客さまを迎える準備の一つとして、「接客シナリオ」の作成をおすすめします。
シナリオは、大まかなものでかまいません。
さらに、ざっとロールプレイング(練習)ができればベストです。
実際の見学会で、このシナリオ通りに話が進むことはあまりないかもしれません。
でも何も準備せず行うよりも、格段に効果は上がります。
シナリオは「現場を説明するためのもの」と「お客さまに対応するもの」に大きく分けられます。
<今回の現場を説明するためのシナリオ>
■ 今回の建物の「ウリ」を整理する
見学会の建物の特徴、「ウリ」を整理して、お客さまに説明できるようにしておきます。
・土地○坪、建坪○坪、施主さまの家族構成
・施主さまのこだわり
・工務店のこだわり など
■ 各部屋ごとの特徴をまとめる
玄関付近、リビング、ダイニング、キッチン、浴室、トイレ、各居室、その他のスペースなど。
それぞれの部屋にストーリーを持たせ、説明できるようにします。
難しく思えるかもしれませんが、自社の家づくりのポリシーが固まっていれば、基本的にどの現場でも共通して使えるものになるはずです。
一度まとめてみてはいかがでしょうか。
<お客さまに対応するためのシナリオ>
■ 家づくりの進捗状況から見たお客さま別で考える
「初級」「中級」「即行」「上級」のお客さまごとに、話す内容は違ってきます。
第78回をご覧ください。
■ 自社のお客さまの性格・性質タイプ別で考える
自社のお客さま(ペルソナ)の傾向に合わせて、対応を検討します。
例えば、コミュニケーションが好きなお客さまなら細かく説明する、もの静かなお客さまならあまりあれこれと説明しすぎない、などです。
だいたいどのような話をするかを、シナリオとしてまとめておき、スタッフ全員で共有します。
なお、自社のペルソナが明確になっていて、ホームページなどでしっかり訴求ができている場合には、ペルソナ寄りのお客さま(共感客)だけが来場するようになります。
したがって、接客パターンも徐々に1種類に集約され、対応しやすくなってきます。
ペルソナについては、第48回で取り上げていますのでご参照ください。
いずれにしても、お客さまには
・自社を売り込まない
・他社の悪口は言わない
この2点だけは気をつけましょう。
接客時のツール(説明資料)
できれば、会場の図面(1/100、配置図・平面図)をA3サイズで用意しましょう。
図面は部屋ごとに色分けをして、分かりやすくします。
そして、見やすいように透明のクリアフォルダーのようなものに入れておきます。
来場者数にもよりますが、2~3枚くらいあれば良いのではないでしょうか。
会場内では、これをお客さまにお見せしながら説明します。
ただし、防犯面や情報漏洩に関わりますので、取り扱いには注意が必要です。
くれぐれも、お客さまには渡さない(持ち帰られない)ように気をつけてください。
接客時に心掛けたいこと
<接客時間60分を目指す>
「お客さまの不安を取り除き、信頼を得る」ことが、現場見学会を行う最大の目的です。
そのために、「お客さまの接客時間60分」を目指します。
来場時の「いらっしゃいませ」から、見送りの「ありがとうございました」までが60分だと考えましょう。
■ なぜ60分なのか
人は、「相手に接する機会が多いほど、警戒心が薄れ、好感度が高まる」ことが分かっています。
心理学で「単純接触効果」と言われているものです。
少し長めに接客し、いろいろな会話をすることで、お客さまもだんだん慣れ、心を開きやすくなります。
つまり、お客さまの「心理的な壁」を取り払うために必要な時間、といえます。
■ 60分、接客するために
家づくりに関心のあるお客さまが来場しているとはいえ、60分接客するのはなかなか大変です。
話す内容も、いくつか用意しておかなければなりません。
ここで先ほどのシナリオが役に立ちます。
また、会話をしていないときでも、お客さまが退屈しないような仕掛けが必要です。
そこで、自社紹介資料や説明パネルを用意しておき、自社のいろいろな情報に触れていただくようにします。
では次回、自社紹介資料や説明パネルについて見ていきます。
第86回に続きます。
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