また申請の際に注意しておくことはありますか?
(50代・工務店・京都)
はい、事業再構築補助金はかつてない大規模な補助金で、幅広い事業者が利用できるものとなっています。
ぜひ活用方法を考えていきたいですね。
実は先日、中小企業庁の事業再構築補助金セミナーを聞く機会がありました。
進行は中小企業庁の役人で、申請を受け付けている立場の方からの話です。
やはり聞いてみないと分からない内容もあり、大変参考になりました。
今回は事業再構築補助金のポイントをご紹介します。
事業再構築補助金とは?
「事業再構築補助金」の正式名称は「中小企業等事業再構築促進事業」です。
新型コロナの影響が長引き、売上が厳しい企業も増え、回復の見通しも難しくなっています。
事業再構築補助金は、このような状況の中で、社会の変化に対応するため新分野への進出や事業・業種転換などに挑戦する中小企業等に、必要な資金を補助するものです。
結果として、日本経済の構造転換を促すことを目的としています。
例えば、何か新しい事業やサービスを始めようとすると、通常は全て自己資金で行う必要があります。
それがこの制度では、その3分の2を国が補助してくれるのです。
事業予算は、令和2年度第3次補正予算で、1兆1,485億円が計上されています。
要件を満たせば、地域や業種を問わず幅広い事業者が活用できるという点で画期的です。
ものづくり補助金とは違うので注意
巷では「事業再構築補助金は、ものづくり補助金に似ている」と言われていますが、実は役所内では同じ担当メンバーが関わっているそうです。
ただ、内容はものづくり補助金とは違うところもあるので注意が必要です。
事業再構築補助金はなぜ注目されているのか?
ところで、中小企業庁の通常年の「補助金予算」はどのくらいあると思いますか?
だいたい1年間で1,100億円ほどだそうです。
それが、今回の「事業再構築補助金」は、1兆1,485億円です。
なんと10年分!
いかに超大型の補助金かが分かります。
それだけ国が本気になって、このコロナ禍の機会をとらえて、一気に産業構造を変えようとしているとも言えます。
工務店は事業再構築補助金を何に利用する?
工務店が事業再構築補助金を利用する場合の可能性を考えてみました。
別事業のフランチャイズに加盟する
分かりやすい例は、全くの別事業を始めるケースです。
例えば、新築を中心とする工務店業が、新たに「介護事業」を始める。
そのために介護事業のフランチャイズに加盟する。
この場合は、事業を始めるにあたって必要な設備機器の購入や研修費用、広告宣伝費などが補助対象になります。
(ただし加盟料は対象にならないので注意が必要です)
世の中には実に多くのフランチャイズ本部があるので、本業と相乗効果が期待できそうな事業を検討してみるのも良いと思います。
従来の事業に関連する事業を新たに展開する
例えば、従来は新築工事が中心だったが、耐震診断と基礎工事も請け負える会社にするようなケースです。
この場合は、耐震診断に必要な機器の購入や、基礎工事に必要な車両などの費用は対象となると思われます。
これが「今まで新築中心だったが、今後リノベもやります」が対象になるかは、なんとも言えません。
審査する側が、新分野展開や事業転換と見てくれるかどうかですね。
採択結果は補助金のホームページで公表されますので、採択例も見ていただくと良いでしょう。
事業再構築補助金の申請にあたっての概要
概要は中小企業庁から公表されています。随時更新されますので、最新版をご覧ください。
参考 事業再構築補助金の概要(中小企業等事業再構築促進事業):PDF -中小企業庁https://www.meti.go.jp/covid-19/jigyo_saikoutiku/pdf/summary.pdf?0601
申請要件
申請にあたり、大きくは下記3つがポイントになります。
売上が減っている
2020年10月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前(2019年または2020年1~3月)の同時期と比較して10%以上減少している。
これが必須の条件です。
事業再構築に取り組む
「事業再構築指針」に沿った新分野展開、業態転換、事業・業種転換等を行うこと。
認定経営革新等支援機関と事業計画を策定する
事業再構築に係る事業計画を認定経営革新等支援機関と策定する。
「認定経営革新等支援機関」とは、一定の要件を満たしたと国が認めた機関で、主に金融機関や会計事務所・経営コンサルティング会社などです。
本補助金の申請要件として、必ず認定支援機関と共同で事業計画を作成しなければなりません。
認定支援機関と一緒に作成するということは、その事業の将来性をシビアに検討することを意味します。
新しければ何でも良いわけではなく、しっかりとした可能性を感じさせるものでなければならないということです。
認定支援機関と事業計画を策定するには、コンサルティング費用がかかります。
しかし今回の補助金では、その費用は補助対象外とのことです。
したがって、コンサルティングの費用は別に考えておく必要があります。
対象者
日本国内に本社を有する中小企業者等及び中堅企業等となります。
中小企業・中堅企業の範囲は、事業再構築補助金の概要(PDF)に掲載されています。
https://www.meti.go.jp/covid-19/jigyo_saikoutiku/pdf/summary.pdf?0601
ほとんどの工務店さんは「中小企業」の範囲に入ります。
個人事業主はどうなのかといえば、上記概要には個人も対象になると記載されています。
第1回公募の採択結果を見ると、実際に個人で採択されている例もあります。
補助額
[通常枠]
中小企業:100万円~6,000万円、補助率2/3
中堅企業:100万円~8,000万円、補助率1/2(4,000万円超は1/3)
[卒業枠]
中小企業:6,000万円超~1億円、補助率2/3
※400社限定、中小企業から中堅企業へ成長する事業者向けの特別枠
[グローバルV字回復枠]
中堅企業:8,000万円超~1億円、補助率1/2
※100社限定、中堅企業向けの特別枠(要件があります)
また、国による緊急事態宣言の影響を受けた事業者に対しては、補助率の高い「緊急事態宣言特別枠」もあります。
「特別枠」は優先的に審査され、不採択となっても加点の上「通常枠」で再審査されます。
工務店(中小企業)の場合、通常枠の補助額は100万円~6,000万円で、補助率2/3です。
つまり、補助対象(後述)であれば、150万円~9,000万円まで幅広く申請ができます。
公募スケジュール
第1回:2021年5月7日(金)締切
第2回:2021年7月2日(金)締切
さらに今後、3回程度の公募が予定されています。
採択結果・事業者名は、「事業再構築補助金」ホームページで公表されています。
第1回公募分は6/16・6/18に結果が公表され、
・緊急事態宣言特別枠 応募5,181者(要件を満たした申請件数4,326者)のうち2,866者を採択
・通常枠、卒業枠、グローバルV字回復枠 応募17,050者(要件を満たした申請件数14,913者)のうち5,150者を採択
となっています。
工務店における採択事例は?
ある住宅会社では、長期優良住宅化リフォームをテーマにして採択されています。
ただし事業計画の中身までは公表されていないため、具体的な内容を知ることはできません。
とはいえ、やはり可能性があるなら、チャレンジすることは大いに意味があると思います。
申請方法
申請は、電子申請システムからの受付のみとなっています。
まずは「GビズIDプライムアカウント」を取得する必要があります。
準備に時間がかかりますので、早めに取得しておくほうが良いでしょう。
申請にあたり注意しておきたいポイント
補助金の対象となる経費・ならない経費
どのような費用が経費として認められるのか、公募要領の「補助対象経費」をよく確認してください。
以下、経費のポイントを少しご紹介します。
対象になる経費
広告宣伝費は対象となりますが、経費全体のどの程度まで見てもらえるかという、かなり現実的な問題があります。
特に制限があるわけではないようですが、全体経費の半分以上が広告宣伝費、というとやはり問題視されるようです。
多くの広告宣伝費をかける場合は、その費用対効果など、説得力ある説明が必要です。
対象にならない経費
■ 不動産、公道を走る車両、パソコンや家具などの購入費
しかし、例えばキッチンカーに改造する場合の改造費は対象となります。
■ フランチャイズの加盟料
新規事業としてフランチャイズに加盟する際の加盟料は対象になりません。
ただし店舗が必要な場合のリフォーム費用や研修費は対象となります。
■ コンサルタント費用
本補助金申請時の事業計画策定をコンサルタントに依頼するときの費用は対象外です。
補助金は後払いなので注意
補助金の支払は後払いです。
したがって、補助金として採択されても補助金が出るまで自己資金(融資も含む)で賄えることが前提条件となります。
申請書の作成で絶対に外してはいけないポイント
申請書は、当たり前ですが公募要領をよく読み、その主旨を理解して作成しましょう。
作成のポイントをご紹介します。
わかりやすい資料づくり
イメージは「スポーツ新聞」とのことです。
写真や表を多用し、誰が見ても分かりやすい資料を作成することが重要です。
販売戦略をしっかり作る
商品やサービスの良さも大切ですが、市場の大きさやその可能性をしっかり押さえ「どうすれば売れるのか」を伝えることが極めて重要です。
したがって、SWOT分析は必須です。
その上で事業の優位性や課題を明確にし、その解決の方向性を訴求します。
財務の健全性は?
例えば、債務超過が数年続いている、というような場合はどうでしょうか?
確かにあまり好ましいとは言えないようです。
それでも、どのように自己資金を調達するか、資金繰りをどうするか、説得力のある内容であれば良いと思われます。
申請書のコピペに注意
極端に言えば、提出した申請書が他の申請書と一言一句同じ内容であるような場合。
これはほぼNGとなります。
いまはAIが申請書類をチェックし、マッチング率(どの程度似ているか)を診断しているそうです。
例えば、たまたま相談したコンサルタントが、全く違う他のエリアの同業種に同様の申請をし、それがコピペまたはマッチング率が高いと判断されたとき。
これは、依頼した側が知らなくても結果としてはアウトになります。
依頼先にも留意したほうが良いと思われます。
いくら内容が良くても書式が整っていないとアウト
審査項目、注意事項、必要な資料をしっかり確認して作成する。
これは役所に出す申請書の基本です。
「面倒だ」「ややこしい」「複雑だ」、これらはすべて諦めさせるワナだと思って、負けずに頑張ってやり遂げましょう。
特に公募要領に記載されている事項を踏まえているかどうかは、必ずチェックしてください。
申請書類の不備によるアウトが多いとのことです。
誰が採否を決めるのか?
余談ですが、誰が採用とか不採用を決めているのでしょうか。
皆さんも気になりませんか?
実は主に中小企業診断士が行っています。
ということは「中小企業診断士が好む表現や書き方」が必要です。
その一つが「SWOT分析」。
いまや多くの補助金申請には必ずと言っていいほどSWOT分析は必須になりました。
これを中小企業診断士が好む出来栄えに仕上げられるかどうか…。
あまり細かな部分にこだわるのも良くありませんが、実践的なポイントではあります。
以上、事業再構築補助金の概要や注意点などをまとめました。
ポイントをしっかりおさえて、ぜひ補助金を有効に活用しましょう。
本記事の続編(令和4年度版)は、第121回をご覧ください。
認定支援機関と連携し、具体的なアドバイスを行っています。
(認定支援機関名:中央総合事務所 東京都新宿区)
ご相談は無料です。書類作成を依頼される場合は費用がかかりますので見積いたします。
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