ところが、決算書の売上総利益は25%どころか、20%にも満たない時があります。
まあ最終利益は出ているので決算書と実行予算は違うものだと解釈していますが、何か釈然としません。なぜなんでしょうか?
(工務店・年商6億円・栃木)
実はこの違いに気づく社長は、意外に少ないですね。
違いは、工事台帳の項目と、決算書の工事原価明細書(製造原価報告書)の科目を比較すればお分かりになると思います。
同じ項目があれば、それぞれに反映されています。
しかし、工事台帳にある項目が工事原価明細書にない、あるいはその逆パターンが起こっている場合があります。
例えば新築工事のケースです。
工事が竣工し、雑工事も終了した段階で、工事監督は現場の精算を行うと思います。
それをまとめたものが「工事台帳」となります。
正確な工事台帳ができていて、そのまま経理ソフトに入力されれば、ほとんど差異は起きないはずです。
でも差異が起きてしまう。なぜでしょうか?
実は「人」が原因だった
答えは意外なところにあります。
それは、工事台帳を作成する人(工事監督)と、経理業務をする人が違うためです。
さらには、工事台帳がきちんと期日までにできていないために起こる場合もあります。
仕訳の段階で違いが起こる
一般的に、会社の経理(会計)業務は、社長の奥さまや経理担当スタッフが行いますね。
その際は、税理士の先生が指定する経理ソフトを使って入力する場合が多いと思います。
入力には「仕訳」という業務があります。
多くの場合、仕訳は業者さんからの請求書を基に行います。
しかし、経理担当のスタッフには、何をどのように仕訳すればよいか分からないときがあります。
そこで税理士さんに確認します。ところが税理士さんも現場のことは分かりません。
ですからある程度、税理士さんの知識と経験で仕訳が行われるわけです。
こうして、工事台帳と決算書の差異が起こります。
工事ごとに正確に処理できれば違いは起こらない
例えば、A邸としてフローリング材10万円を仕入れたとします。
足りなかったため、さらに在庫にあったフローリング材を3万円分使ったとします。
この場合は、材料費として13万円を台帳に計上し、これが決算書に反映されるのが正しい方法です。
ところが請求書が10万円だったため、経理担当は10万円で処理してしまった、という例もあります。
やっかいなのは、A邸とB邸のフローリング材を同時期に納品し、合計で請求書が来た場合の処理です。
工事監督がきちんとその内訳を分ければなんら問題はないのですが、面倒なのかいつまでも処理しない監督もいます。
そのため、仕方なく経理担当が独断で分けてしまう、といったケースも見てきました。
仕訳と工事台帳の項目はできるだけそろえる
では、これが大問題か、というとそうではありません。
そもそも経理は「税務会計」を基本に行っています。
きちんと税法に則った税務申告をするための裏付けが、決算書です。
ですから、仕訳が原価に入っても、販管費に入っても、税務上はあまり影響ありません。
しかし、原価管理や利益管理という観点からすると、大きな問題です。
このような、会社全体の数字を管理するものを「管理会計」と言います。
これは税理士さんが行うものとは別に作成されることも多いのですが、中小工務店では非常に手間がかかります。
できる限り税務会計でも管理ができるよう、仕訳を見直し工事台帳の項目に近づけることをおすすめします。
この記事に関するご質問・ご感想・お問い合わせは【工務店経営の専門家・ジクージン】まで、お気軽にお送りください。