たまたま今期は4月引渡しの建物が2棟あるため、その2棟分は来年度の売上になります。
でも3月までに工事の大半は終了しており、その2棟分の原価は発生しますよね?
そうなると今期の利益を圧迫するのですが、何か対策はありますか?
(工務店・業歴11年・岐阜)
はい、これは間違えやすいですね。
売上と原価については、しっかり確認をしておきましょう。
間違えている利益の計算の例
では、お問い合わせの内容を見てみましょう。ちょっと極端な例を挙げます。
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決算対象の1年間に、2棟だけ仕事をしました。
1棟の単価は2,000万円、原価率は80%、1年間の経費が500万円でした。
この2棟が3月末までに引渡しが終わらず、4月に引渡しとなりました。
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この場合の利益です。
まず、引渡しは翌期のため、今期の売上高(完成工事高)は、0円となります。
しかし、3月末までに工事の大半は終わっています。ここでは90%完了としましょう。
1棟の原価は、売上高2,000万円 × 原価率80% = 1,600万円
3月までに90%完了したので、1,600万円 × 90% = 1,440万円(今期の1棟あたり原価)
これが2棟あるので、1,440万円 × 2棟 = 2,880万円(今期の原価総額)
粗利益(売上総利益)は、0円(売上高)- 2,880万円(原価) = -2,880万円(粗利益)
すると今期の利益は、-2,880万円(粗利益)- 500万円(経費) = -3,380万円(利益)
つまり赤字3,380万円となる?
…ではありません。
こういう計算にはならないのです。
「売上」と「原価」はセット
今回のポイントです。
決算書上は、
「売上(完成工事)には、必ず原価(工事原価)がついてくる」
逆に言えば、「売上計上がなければ、原価も計上されない」のです。
売上と原価がバラバラになることはありません。
ですから、この場合は、売上高0円であれば、原価も0円です。
よって赤字は経費分の500万円となります。
2棟の原価は含まれないので、利益の圧迫要因にはなりません。
とりあえず良かった、ということです。
「原価」も決算書には計上されている
ところで、その発生している原価はどうなるのでしょうか?
それはこの場合、貸借対照表の「未成工事支出金」として、2,880万円が資産(仕掛り)として計上されます。
(実際には工事の進捗状況によります)
損益計算書上は赤字でも、貸借対照表に「未成工事支出金」が計上されていることで、「仕事はちゃんとある」と外部(たとえば金融機関)も判断できるのです。
どの時点で「売上」とするか
また売上のタイミングは「売上基準」によります。
「この会社がどの時点を基準に売上を決めているか」というものです。
一般的に、新築住宅を請け負う工務店は、「工事完成基準」を採用していることが多いですね。
ただそれだと、この例のように、なかなか売上が立たない場合が起こってしまいます。
そこで、出来高を基準にする「工事進行基準」という方法もあります。
1年以上にわたる長期工事は進行基準を採用します。
ただし、完成基準と進行基準、どちらかに決めたら簡単には変更できませんので気をつけてください。
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