これからでも大丈夫でしょうか?
(工務店経営・40代・新潟)
はい、今からでも大丈夫です。事業再構築補助金は会社の新事業等に使うには大変良い制度です。前向きにご検討ください。
ただし、第10回公募からは要件が大きく変わりますので、早めの対応をおすすめします。
この3年間、事業再構築補助金を使うかどうか迷われている会社は、大至急検討が必要です。
というのも、工務店にとっては、第9回公募に比べ、第10回以降は必ずしも使い勝手が良いとは言えないからです。
その理由を、第10回以降どのように変わるかを見ながらご説明します。
事業再構築補助金については、過去の関連記事も参考にどうぞ。
「事業再構築補助金」ホームページもご参照ください。
参考
事業再構築補助金 -中小企業庁
2023年2月現在行われている公募は?
2023年2月現在、第9回公募が行われています。
締切は2023年3月24日(金)18時です。
今回の公募は、それまでの公募とほぼ同様の流れになっています。
細かくは前回と微妙に変更になっていますが、基本的な考え方に違いはありません。
事業再構築補助金【第9回公募まで】の概要と特徴
(1)第9回公募までの事業再構築補助金の目的
※第9回公募要領から抜粋
(2)対象となる会社・企業
事業再構築補助金の対象となるためには、「必須申請要件」を満たさなければなりません。
<必須申請要件>
1.2020年4月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前(2019年又は2020年1月~3月)の同3か月の合計売上高と比較して10%以上減少していること 等。
2.経済産業省が示す「事業再構築指針」に沿った3~5年の事業計画書を認定経営革新等支援機関等と共同で策定すること。
<ほかの申請要件>
申請要件は「類型」でさらに細かく設定されています。
次項(3)事業再構築補助金の「類型」も参考にしていただき、公募要領を必ずご確認ください。
経済産業省のサイトに、事業再構築指針、公募要領などが掲載されています。
参考
事業再構築補助金ページ -経済産業省
(3)事業再構築補助金の「類型」
一言で事業再構築補助金といっても、実は何種類かの「類型」があります。それを「枠(わく)」と呼んでいます。第9回公募では以下の「枠」があります。
・「通常枠」
・「大規模賃金引上枠」
・「回復・再生応援枠」
・「最低賃金枠」
・「グリーン成長枠」
・「緊急対策枠」
申請の最も多いものが「通常枠」で、対象企業の要件が従業員数で分かれています。
例えば従業員20人以下なら、補助額が下限100万円・上限2,000万円、補助率は中小企業が2/3、中堅企業1/2です(詳しい内容は公募要領のP2以降またはP12以降、中堅企業の定義は公募要領のP8をご参照ください)。
工務店はまず「回復・応援枠」を
コロナの影響や原価高騰の直撃を受けた企業の場合、「回復・応援枠」の申請要件を検討しましょう。
工務店の中には、「回復・応援枠」の要件を満たす企業は多くあると思います。
・従業員数5人以下:補助額100万円~500万円
・従業員数6人~20人:100万円~1,000万円
・従業員数21人以上:100万円~1,500万円
補助率は3/4(中小企業)となります。
空き家のリノベにも使える可能性
例えば、従業員数12名、新築工事だけではなく、空き家のリノベを新事業として検討している場合。
そのためのモデルハウスが必要と考え、リノベ費用が1,200万円、広告費が100万円かかるとします。
回復・応援枠の要件を満たしていれば、対象経費は1,300万円で、補助率3/4の975万円が補助金となる可能性があります。
もちろんしっかりとした申請書を作成し、申請を行い、採択されなければなりません。
ちなみに採択率は平均で40~45%程度です。
とはいえ、何らかの新規事業を検討していて1,000万円近くも補助金が出るのであれば、トライする価値は大いにあると思います。
入金は1年後、それまでの資金繰りを検討しましょう
ただし、補助金の入金はかなり後になります。
申請し、採択され、申請内容を実行し、約1年後に、かかった経費や結果報告を行います。そこで問題がなければ、はじめて補助金が振り込まれます。
つまり、補助金が入るまでの約1年の資金繰りは別に考えなければなりません。
金額によりますが、対象経費が1,000万円を超えるような場合は、金融機関と事前に打合せを行い融資の確約を得ておくことをおすすめします。
【注意】第8回公募で申請した方は、第9回の申請はできません
第7回公募までは、採択発表後に次の公募が始まるスケジュールとなっていました。
そのため、採択されなかった場合は次回の公募で再チャレンジが可能でした。
しかし、第8回公募の採択発表は、第9回公募の応募締切後の予定です。
つまり第8回公募で申請された場合、第9回公募での申請はできません。次に申請可能なのは第10回公募となります。
事業再構築補助金【第10回公募】はどうなる?
参考 事業再構築補助金ページ -経済産業省上記ページの「令和4年度補正予算の概要」にある、
「事業再構築補助金 令和4年度第二次補正予算の概要(PDF形式:1,306KB)PDFファイル」を参考にしてください。
※随時更新されますので最新のものをご覧ください。
(1)大きく変わる目的
※事業再構築補助金令和4年度第二次補正予算の概要 1.2版令和5年1月版より抜粋
・物価高騰等の影響への支援
・感染症等の危機に強い事業への大胆な事業再構築の取り組み支援
・中小企業等の付加価値額向上や賃上げ
などの文言が記載されたことです。
(2)主な変更点
・いままでの「通常枠」を再編し、売上高減少要件を撤廃。市場規模が拡大する業種・業態への転換を支援する「成長枠」を創設
・「グリーン成長枠」に、要件を緩やかにした「エントリー」類型を創設
・市場規模が縮小する業種・業態からの転換を支援する「産業構造転換枠」を創設
・製造拠点の国内回帰を進め、国内サプライチェーンの強靱化・地域産業の活性化に貢献する「サプライチェーン強靱化枠」を創設
※最低賃金引上げの影響を大きく受ける事業者の事業再構築を支援する「最低賃金枠」は継続 参考 中小企業庁担当者に聞く「令和4年度第2次補正予算 事業再構築補助金」 -経済産業省ミラサポ より抜粋
(3)主な変更点の解説
1.「売上減少要件」の撤廃
なんと、これまで必須要件であった「売上減少要件」がなくなります。
事業再構築補助金のどの枠で申請するにしても必ず必要だった売上減少要件がなくなるということは、コロナ禍で影響を受けることなく事業を行ってきた会社にとっては朗報と言えます。
2.「成長枠」の要件
これまで最も多く使われていた「通常枠」がなくなり、「成長枠」が創設されます。
この「成長枠」はかなりハードルが高い印象です。
① 取り組む事業が過去~今後のいずれかの10年間で市場規模が10%以上拡大する業種・業態に属していること
② 事業終了後3~5年で給与支給総額を年率平均2%以上増加させること
この2つを両方満たさなければなりません。
「10年間で市場規模が10%以上拡大する業種」とは何でしょうか?
これについては、公募開始時に事務局ホームページで公開する予定となっています。
考えられるのは、DX関連やグリーンエネルギー関連などでしょうか。
また補助率は1/2で、従来の2/3より減少します。ただし大規模賃金引上促進枠を使うことで2/3になるようです。
3.「産業構造転換枠」の要件
① 過去から今後のいずれか10年間で市場規模が10%以上縮小する業種業態に属していること
② 地域における基幹大企業が撤退することにより、市町村内総生産の10%以上が失われると見込まれる地域に属しており、当該基幹大企業との直接取引額が売上高の10%以上を占めること
①と②は、要件が全く違うので同時に満たす必要はありません。
市場規模が10%以上縮小する業種業態は業界団体が申告する、または客観的なデータの提出を受けて事務局で審査するそうです。
新築市場は今後縮小する業種です。悲しい話ですが…
この枠での事業再構築補助金の申請は、やりやすいかもしれません。
4.事前着手制度の見直し
① 交付決定前に事業に着手できる、事前着手承認制度について、対象期間を令和4年度第二次補正予算の成立日である2022年12月2日以降に見直す
② 本制度を活用いただける事業類型を「最低賃金枠」「物価高騰対策回復・再生応援枠」「サプライチェーン強靭化枠」に限定する
どの枠でも事前着手申請ができるのは第9回公募までになり、第10回以降は上記の枠しか対応しません。
本来、補助金・助成金は、先に申請し採択されてから実施するもので、先に着手したものに救いの手を伸ばすものではありませんでした。
その意味で事業再構築補助金は、コロナの影響で厳しい環境にある企業を救う対策としてかなり柔軟な対応をしてきたと言えます。
5.産業雇用安定助成金との連携
あまり知られていないのですが、産業雇用安定助成金は事業再構築補助金と相性の良い助成金です。
こちらは厚生労働省管轄です。令和5年度から新しい制度が始まる予定となっています。合わせて注目しておきましょう。
補助金関係で使われる似通った言葉の解説
補助金と助成金の違い
「補助金」は主に経済産業省や地方自治体の管轄
「助成金」は主に厚生労働省や地方自治体の管轄
となります。
「補助金」は、事業の成長に役立つものを支援する制度です。
申請期間が短く、繰り返し公募されるものは少ないのですが、コロナ以降、事業再構築補助金、ものづくり補助金、小規模事業者持続化補助金などが定期的に公募されています。
「助成金」は人材に関するものが多く、条件が合えば必ず支給されます。
3月~4月に新年度の補助金・助成金が発表されるので、それを経営計画に盛り込んでおくと良いでしょう。
補助金と助成金については、第27回もご参照ください。
「事業」の使われ方
国や自治体が行う政策や制度のことを「事業」と呼びます。
事業再構築補助金の説明で使われる「本事業」とは「事業再構築補助金制度」のことを指します。公共事業の事業です。
一方、「事業再構築」の「事業」は、会社の事業の意味です。
第10回以降の事業再構築補助金 まとめ
第10回以降の事業再構築補助金には、国の方針がはっきりと出ています。
まず新型コロナウイルスやウクライナ情勢をきっかけにした、産業構造の大転換です。
次に、物価高騰への支援、感染症をはじめとする危機に強い事業への大胆な変換、そして生産性の向上と賃上げです。
具体的には、成長産業への積極的な支援であり、一方で衰退産業からの脱却です。
そのプロセスで生産性の向上を求めています。
さらに、賃上げ要請です。もはや大企業だけにとどまらず、中小企業にも要請しています。
厳しい状況の中でも賃上げをする中小企業には支援をする、という国の意志は明確です。
工務店は社長の判断が鍵を握る
新築住宅やリフォーム業は成長産業ではありません。しかし完全になくなる産業でもありません。
ここが悩ましいところです。
10年後に成長しているか、今のままか、衰退するか。
それは社長のかじ取り次第です。
第9回公募で申請するか、第10回以降にするかは早急に検討されることをおすすめします。
資金繰りが苦しい場合は「中小企業活性化パッケージ」も
売上の減少や資金繰りが悪化している企業の場合は、「中小企業活性化パッケージ」という別の支援策もあります。
参考 中小企業活性化パッケージNEXTを策定しました -経済産業省従来は経済産業省、財務省、金融庁など、省庁がバラバラに行っていた施策を一つにまとめ、それを実行する機関として、中小企業活性化協議会(旧:中小企業再生支援協議会、再生支援センター)が令和4年4月に発足し、支援を行っています。
こちらは「事業再生」の領域になり、「事業再構築」とは意味が違います。
「事業再生」は、経営状態の悪い会社が事業を立て直すために、金融機関と協力して経営改善に取り組むものです。
この中に事業再構築補助金を利用するケースもあります。
こちらは利用する際のアドバイスも弊社で行っております。詳しくはご相談ください。
認定支援機関と連携し、具体的なアドバイスを行っています。
ご相談は無料です。書類作成を依頼されたい場合は費用がかかりますので見積いたします。
その他、補助金・助成金や国の制度について知りたいことがありましたら、お気軽にお問い合わせください。
この記事に関するご質問・ご感想・お問い合わせは【工務店経営の専門家・ジクージン】まで、お気軽にお送りください。