第117回記事の続きです。
ウッドショックを乗り越えるための、工務店の対応を考えていきます。
工務店がいまやっておくことは?
(1)材料の確保
工務店と材木屋との取引状況により、材料の確保には差が出ているようです。
仮に調達できても、かなり高値となっていると聞きます。
とりあえずいま困っている場合は、できる限り多くの材木問屋などにあたり、熱心にお願いすることが肝要です。
これは何ごとにも通じますが、困ったときは真剣に誠実に何度でもお願いすることです。
(2)お客さま対応
すでに工事請負契約書を締結している施主さまに対しては、状況を説明する前に、契約書内容を再確認しましょう。
ウッドショックで契約工期が遅れたときや、価格の急上昇などが発生したときに説明ができるかどうかをチェックしてください。
もし契約書内容が不十分で、工期遅れの際の遅延損害金や価格上昇分を工務店側が負担する内容になっている場合は、別途その内容を記載した覚書等を用意します。
覚書等の内容は、必ず弁護士など法律の専門家に確認をしてもらってください。
その上で、施主さまに対して誠意をもって状況を説明し、同意を求め覚書等を締結します。
もし同意がいただけない場合は、契約書が優先される可能性が高くなります。
そのときはできる限り工期優先で引渡しできるよう努力します。
(3)資金繰り対応
材料不足により、着工や上棟ができず入金が遅れ、資金繰りが悪化しているケースも多いと思います。
資金繰りの見通しが良くない場合は、まず資金繰り表を作成し「いつごろから、どの程度の期間、資金の不足が発生するか」を正確に把握します。
資金繰り表の作り方は、第8回で取り上げていますのでご参照ください。
その上で金融機関に融資を依頼します。
もっと逼迫している場合は、早めに金融機関に相談しましょう。
すでに金融機関に相談し、ある程度借り入れたものの資金繰りが改善しないときは、それぞれの工務店ごとに個別の対策が必要です。
その場合は弊社までご相談ください。
無料相談を承っています。御社に最適な対応策を一緒に考えましょう。
→無料経営相談 特設ページをご利用ください。
これから2~3年の住宅業界は?
新築住宅の着工戸数はどうなるのか?
令和2年度の住宅着工戸数は前年比約10%減でした。
実はコロナがなくても着工戸数の減少は予測されていました。
野村総合研究所の予測によりますと、今年度は前年度の落ち込み分があるため、前年並みの予想をしているようです。
参考 野村総合研究所、2040年度の住宅市場を予測(株式会社野村総合研究所)https://www.nri.com/jp/news/newsrelease/lst/2021/cc/0608_1
しかし、木材不足による工期の不安定、住宅価格値上げの影響で、令和3年度(2021年度)も再び減少の可能性が出てきました。
木材の需給バランスが徐々に改善すれば、令和4年度(2022年度)には、減少した過去2年分の需要が発生する可能性はあると思います。
粗利益率の低下
木材不足、仕入原価の高騰が続くと、利益率は下がります。
そこで、見積価格を上げる必要が出てきます。
すでに大手ハウスメーカーが値上げを発表している状況です。少なからず追随する住宅会社もいるでしょう。
しかし、そう簡単に「じゃあ、うちも値上げしよう」とはいかないものです。
前述の通り、大手が値上げすれば、買い控えが起きると予想されます。
買い控えが起きると受注競争が激しくなります。
すると、値引き合戦が始まります。
特にハウスメーカーは値上げと言いながら、営業現場では大幅な値引きを始めます。
これは過去何度も経験している事実です。
要するに、工務店としては「木材原価が上がっても見積価格に反映することは難しい」と言えます。
しかし、外注業者に値引きの要請や単価の引き下げなど価格転嫁をするのも難しいものです。
ここ数年、外注業者もかなり協力していることが多く、これ以上の協力はできないという場合もあるでしょう。
強引に価格転嫁を行えば、これまで協力的だった業者でさえ全く相手にしてくれなくなることも考えられます。
工務店も大変ですが、外注業者も大変です。
職人が不足する?
仮に2022年ごろからウッドショックの状況は改善したとしても、新たな問題が発生します。
職人不足問題です。
ここ数年は、たまたま住宅の需給バランス、職人の高齢化や引退年齢、施工技術の改善などが絶妙にうまく回っているだけで、実際には職人不足は表面化しています。
職人の取り合いになると、次は職人の手間賃が高騰します。
こうしてまだまだ原価は上がるのです。
工務店はどう対応していくか?
(1)業務効率の改善を考える
シンプルに考えてみましょう。
売上高(見積)、原価、粗利、販管費、営業利益の関係は以下の通りです。
粗利 - 販管費 = 営業利益
まず「販管費より粗利が多ければ、営業利益は残る」ことを再確認しましょう。
ちなみに粗利益率は、
粗利益率 = 粗利 ÷ 売上高
つまり、
です。
原価が減れば、粗利が増え、粗利益率が上がります。
逆に原価が増えれば、粗利益率は下がります。
ところで売上高は、
売上高 = 棟数 × 単価
ですから、粗利は、
粗利 = 棟数 × 単価 × 粗利益率
となります。
そして営業利益は、
粗利 - 販管費 = 営業利益
でしたから、
となります。
営業利益を残すためには?
こうしてみると、営業利益を残すためには、
・「販管費」を減らす
このどちらかしかありません。
原価が上がり、一方で単価は上げられないのであれば、粗利益率は下がることになります。
これを解決するためには、
2.「販管費」を減らす
3.「棟数」を増やし「販管費」を減らす(両方を同時に行う)
1~3のいずれかを行う必要があります。
<1.「棟数」を増やす について>
棟数を増やすには、集客を増やし、契約確率を高める必要があります。
<2.「販管費」を減らす について>
販管費の中で多くを占めるものは、人件費と広告宣伝費です。
しかし、人件費や広告宣伝費を減らせば、集客や契約に影響が出ることもあります。
つまり、「限られた人件費と広告宣伝費で効率よく集客し、契約につなげる」、これをいま行わなければなりません。
ひとことで言えば「業務効率の改善」です。
ウッドショックは見直しのチャンス
「業務効率の改善」は、普段からよく耳にされていると思います。
しかし、会社がそこそこ回っているときはあまり意識しないものです。
今回のウッドショックは、見直しをする非常にいい機会です。
少ない販管費で最大の契約数を獲得するよう、業務の効率化を真剣に考えましょう。
(2)原価を下げる必殺技?
木材価格が高騰し、原価は上がっています。
しかも、職人不足も同時並行的に進んでいる。
これらを一挙に解決する方法があります。
それは、「職人の内製化」です。
これについては第74回でご紹介していますので参考にしてください。
さいごに:SDGsの観点からも
安い輸入材を使うことが当たり前になって久しく、国内の森林資源の活用をなおざりにしてきたことも問題です。
住宅に必要な木材は日本中どこにでもあります。
しかし、木材の伐採、製材加工ができる業者は減少が続いており、需要が急に増えたからといって対応できる状況ではないのです。
ウッドショックをきっかけとして、SDGsの観点からも、国産材を利用する仕組みを住宅業界全体で見直していきたいものです。
なお弊社では、コロナ禍やウッドショックにより、集客や資金繰りに影響を受ける工務店さんのための無料相談を行っています。下記特設ページよりご連絡ください。
この記事に関するご質問・ご感想・お問い合わせは【工務店経営の専門家・ジクージン】まで、お気軽にお送りください。